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五つの偉大なる魂のヨーガ【パンチャ・マハープルシャ・ヨーガ】



※以前掲載した同タイトルの記事を再執筆したものです


インド占星術のヨーガ紹介シリーズでは、古典に記されているヨーガを実例とともに紹介していますが、今回は数あるヨーガの中でも特に重要とされるパンチャ・マハープルシャ・ヨーガについて書いてみたいと思います。


こちらはグラハ(惑星の)ヨーガの中でも広く知られているもので、成立条件も比較的わかりやすく、影響力も甚大。

パンチャ・マハープルシャとは、直訳すると「五つの偉大な魂」※1

すなわち、このヨーガの所有者は高められた惑星の力によって、偉大な性質を身に付けるということでしょうか。


では、成立条件を見てみましょう。

 

 

Pancha Maha Purusha Yoga

 

【定義】

定座 or ムーラトリコーナ or 最高星位の惑星(ラーフ、ケートゥ、太陽、月を除く)がケンドラ・ハウス(1,4,7,10)に在住する。

 

【意味】

(例)裕福、有名になる。繁栄、幸運。子供、配偶者および車に恵まれ、良い食事を取る、etc

 

定位やムーラトリコーナなど、惑星の品位についてわからない方はこちらの記事をご参照ください。


定義に記されているように、対象となるのは水星、金星、火星、木星、土星

すなわち、これが「五つの偉大な魂」になりえる惑星というわけです。

なぜ、この5惑星なのか?

ラーフとケートゥは「阿修羅(魔族)」の惑星なので偉大にはなりえないし、太陽と月に関しては「もともと偉大だから」というのが理由のようです(太陽は王、月は王妃)。


また、パンチャ・マハープルシャ・ヨーガというのはあくまで総称であって、成立する惑星によって固有の名称が付けられています。

 

水星→バドラ・ヨーガ

金星→マラヴィヤ・ヨーガ

火星→ルチャカ・ヨーガ

木星→ハンサ・ヨーガ

土星→シャシャ・ヨーガ

 

例えば、火星が7室で定座にあれば、その人はルチャカ・ヨーガを持っているということですね。

 

では、パンチャ・マハープルシャ・ヨーガの効力とはいかなるものか?古典には色々と書いてありますが、要は

「その惑星の良い面が発揮され、パーソナリティーや人生そのものに強く影響する」

ということだと思います。

例えば、マラヴィヤ・ヨーガの持ち主であれば、金星の象意が強調され、性格や人生にそれが反映されるということですね。


では、それぞれのヨーガに関して実例を挙げてみましょう。


 

Bhadra Yoga



ビル・ゲイツのホロスコープではケンドラの4室に定座の水星があり、バドラ・ヨーガが成立しています。

Bhadra(バドラ)は「幸運」「縁起が良い」を意味するサンスクリット語。

サンスクリット語には「目覚めた人」「智慧」を意味する「Buddhi(ブッディ)」という言葉がありますが、語源を辿ると関連性があるのでしょうか。


バドラヨーガは知性と実務をあらわす水星のヨーガであり、パンチャ・マハープルシャ・ヨーガの中でも特に現実的な成功に直結するヨーガであると言われています。

水星の象意といい、現実世界での成功といい、まさにビル・ゲイツを象徴するようなヨーガですね。


Ruchaka Yoga



「明るい」「輝く」という意味のRuchaka(ルチャカ)の名を冠する火星のヨーガ。

こちらはヘビー級史上初となる通算3度の王座獲得成功と19度の王座防衛を成し遂げ、世に「20世紀で最も偉大なスポーツ選手」と言わしめたモハメド・アリのホロスコープです。


火星はケンドラの10室でムーラトリコーナの星位にあります。

火星の持つ「闘争」「勇敢」「集中力」などの象意は、スポーツ選手の特性によく適合します。


しかしながら、モハメド・アリの「闘争」はリング上にとどまらず、のちに反戦運動や黒人差別への抵抗など、「社会悪」との闘いへと発展していきました。



Hamsa Yoga



ハンサヨーガを紹介するためには、どうしてもラオ先生を避けて通るわけにはいきません。

Hamsa(ハンサ)は「白鳥」を意味するサンスクリット語。インドの鳥というと孔雀などを連想しますが、技芸と学問を司るサラスヴァティー女神は白鳥を乗り物とするなど、白鳥は神話や伝承において特別な役割を担うことがあるようです。


インド占星術において一切の妥協を許さず、高潔な生き方をなおも貫かれているラオ先生。まさにその生涯を象徴するようなヨーガです。

木星はケンドラの10室に在住し、高揚。なおかつ凶星からの影響をまったく受けていません。

そのクオリティにおいてもなかなか類を見ないマハープルシャヨーガです。



Sasa Yoga



上皇后美智子さまのホロスコープでは土星はケンドラの4室に在住しており、山羊座なので定座の強さとなります。シャシャヨーガを形成しています。


Sasa(シャシャ)は「ウサギ」を意味します。

火に飛び込んだウサギ」という有名な昔話をご存じでしょうか?※2

実はこれはインドの昔話で、簡単にいうと「Sacrifice(自己犠牲)」の話です。

シャシャヨーガは土星の象意である「忍耐」「試練」「自己抑制」を通じて成功をもたらすと言われていますが、そういった性質をもとに昔話のSasaから名付けたのだろうか?などと空想が湧いてきます。


実際、初めて平民からお妃になられた美智子さまはご成婚以来数々の試練を経験されましたが、万民を労わる姿勢や知性を偲ばせる発言から国民の厚い支持を受け、今に至っています。



Malavya Yoga



Malavya(マラヴィヤ)とはどうやらインドの地名だったようですが、情報がないので一体どういう場所だったのかわかりません。しかし金星のヨーガがこの名を冠していることから、おそらく芸術や学問が振興していた地域だったのではないでしょうか。


芸術・恋人の惑星である金星のマラヴィヤ・ヨーガの実例としては、ちょっと意外であろう人物を取り上げてみました。

イラク共和国の大統領であった故サダム・フセイン氏です。

金星はケンドラの10室で高揚しています。


「悪の枢軸」と名指しされ、アメリカと戦争の末に捕らえられ、処刑されたサダム・フセイン。

「恐怖の独裁者」というイメージが流布されてしまった(実際そういう面はあったと思いますが)フセインですが、電気網などのインフラ整備による貧困層救済、学校教育の強化、そして女性の婚姻の自由と離婚の権利を認めるなど、アラブにおける女性解放運動の先駆者としての功績があります。

金星は言わずもがな、女性を象徴する惑星のひとつです。


 

というわけで、今回は「五つの偉大なる魂」、パンチャ・マハープルシャ・ヨーガをご紹介しました。

このヨーガの最大の特徴は、ダシャーの良し悪しに関わらず、生涯を通じてその効果を発揮できるということ。いわばその人の「守護惑星」を持っているともいえるかもしれません。

 

また、ラグナからだけではなく月から見てケンドラ・ハウスに在住していても成立と見なすという考え方もあるようです。

ぜひ、ご自分のホロスコープをチェックしてみてください。


※1「プルシャ」の訳は他に真我、本来の自己など。

※2 筆者はこの説話を漫画『聖闘士星矢』で知った。


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