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アーユルヴェーダとインド占星術



アーユルヴェーダとインド占星術の関係性について、ちょっとした考察。 少しインド文化に詳しい人、または熱心にヨガやアーユルヴェーダを学んでいるような人なら、いわゆるアーユルヴェーダとインド占星術が同じ「ヴェーダ」に属する学問であるということは聞いたことがあるかもしれない。

ヴェーダとは、インドにおいて太古の時代から伝えられてきた教えが後世書き留められ、文献となったものだ。「知恵」「知識」などと訳されることが多い。


正確に言えば、アーユルヴェーダは「ウパ・ヴェーダ」と呼ばれるヴェーダの応用学に属し、インド占星術(Jyotish)は「ヴェーダーンガ」と呼ばれる補助学という位置付けだ。


なので、特にアーユルヴェーダやヨガから入った人の中はこのふたつを同系統の学問と見なし、ミックスさせて考える人も多い。

「ヴェーダ」という同じ根を持つのだから、例えばアーユルヴェーダでいうドーシャ(体質理論)が正確に惑星やダシャーに対応しているのだろう、というような。


実際、そのように論を展開して発表しているインド占星術家も多い。

しかし、実はここに陥穽があり、結論から言えば「ラオ式」ではホロスコープの解釈にアーユルヴェーダ的な視点を積極的に取り入れてはいないようだ。


清水先生もラオ先生のBVB(インド占星術学校)の医療占星術クラスでアーユルヴェーダを教わったことはないと語っているし、僕もレッスンやセミナーでそのようなことを教わった記憶はない(ピッタやヴァータなどの用語がまったく登場しないという意味ではない)。



欧米におけるアーユルヴェーダとジョーティシュの権威、デイヴィッド・フローリー



アーユルヴェーダ的な視点をJyotishに取り入れている占星術家で有名なのは、アメリカにおけるヒンドゥー教、アーユルヴェーダ研究の第一人者であるデイヴィッド・フローリーだ。

ディヴィッドはヴェーダ占星術研究家としても広く知られている。

実際、Amazonで検索してみると、インド神話やアーユルヴェーダ、占星術にいたるまで実に広範なジャンルの書籍がずらりと並ぶ(一部は邦訳されている)。 しかし、ラオ先生とディビッド・フローリーたち欧米のヴェーダ占星術家には軋轢があったというのは有名な話。僕も彼らのヴェーダ占星術というのがどのようなものなのか知らないが、いわゆるラオ式とはかなり違うと見ていいだろう。


そのデイヴィッドがラオ先生と直接会った時、彼はアーユルヴェーダとインド占星術の相関性について研究を進めるべきだと熱心に説いたそうだが、その後のラオ先生の様子から見ても、特に彼に影響された部分はなかったようだ。



※一応、医療占星術の書籍も出版されてはいる。著者のK.S.チャラク氏はかつてBVBに在籍。しかしその後ラオ先生と袂を分かった



では、ラオ式の医療占星術はどうかというと、先ほど述べたようにアーユルヴェーダの痕跡はほとんどない。

清水先生の言葉を借りれば、両者の関係性は希薄、もしくは別物であるということだ。


というより、医療占星術は現状ほとんど未開拓の分野である。 ラオ先生は第一線で活躍する医師が医療占星術の研究を進めるべきだと考えているが、やはり広範な体系のインド占星術を現役バリバリの医師が学ぶ時間はあまりない。


また、僕もセミナーで少し触れただけだが、医療占星術を本格的に学ぼうとするならナクシャトラやドレッカナ、グリカ(感受点)など特殊な観点での勉強が必要になるようだ。


なので、「餅は餅屋」ということで、現状、「診断」に関してインド占星術家が貢献できることはほとんどない。

かろうじて病気の部位が当たるくらいだが、あまり深く突っ込まず、「このあたりは弱点かもしれませんが、一度ちゃんと医者に診てもらってください」というくらいのアドバイスに留めておくのが正しいということになる。




ただし、アーユルヴェーダにおいてインド占星術が貢献できる分野は確かにある。

それはダシャーとムフルタ(吉日選定)である。


ダシャーは時系列の変化をあらわすので、たとえばその人が持病を持っていた場合、いつ悪化するのか、またいつ良くなるのか、そうした事前の予測には役立つだろう。


また、ムフルタによってアーユルヴェーダに使う薬草を採取する時間を選定する、ということも行われていたようだ。ハーブも摘む時間が重要になるということらしい。

現代医学においては手術する時間もムフルタで選べば、より良い結果を期待できる。

はっきり言って、もし自分が重大な手術をするはめになったら、日時は絶対選ばせてほしい(笑) このように、限定的だがインド占星術は医療分野においても効力を発揮できる場面がある。

ただ、安易にホロスコープの解釈には結び付けないほうがいいのだと思う。

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