アイビーさんとの師弟対談【とあるインド占星術師が考える欲との付き合い方】Part.2
Twitterスペースにて行われたアイビーさんとの対談「師弟対談【欲とは?】とあるインド占星術師が考える欲との付き合い方withアキュバル先生」文字起こしのパート2です。
人は何層にも重なったダシャー(欲望)の中に生きている
アキュバル 欲望ということでいうと、「その人らしい」欲をちゃんと持っている人と、そうでない人がいますよね。服装でたとえると、ちゃんと自分に似合う服を選んで着こなしている人と、逆に服に着られちゃっている人。なぜそうなるかというと、自分に似合うファッションを見誤っているから。
ホロスコープは、まさに自分に見合う欲を教えてくれるものなのかもしれません。また、えてして人は「他人の」欲望を生きてしまうこともありますよね。
アイビー あると思います。
アキュバル 他の人がそうしているから、誰かに言われたから・・・動機はさまざまですが、どこか違和感を抱えながらずっと他人の欲望の中に生きてしまうこともある。僕にもそういう時期がありましたよ。
アイビー そういう一見ムダな努力の中に生きてしまうという時期も、ダシャー※1でわかったりしますよね。そう考えると興味深いです。
アキュバル インド占星術に寄せて「欲」というものを考えるなら、たとえばダシャーにはレベルがありますよね。何年、何十年単位で運気を見るマハー・ダシャー(レベル1)、それを分割してより具体的な出来事を見ていくアンタル・ダシャー(レベル2)、さらにそれを細分化したプラティアンタル・ダシャー(レベル3)。この段階はそのまま欲のレベルに置き換えることができると思うんです。
マハー・ダシャーは自分の奥底、もしくは遠方に存在する「何々がしたい」という最も大きな欲望だとすると、アンタル・ダシャー、プラティアンタル・ダシャー、さらに細分化されたスークシュマ・ダシャー(レベル4)なんていうものもある。それはたとえるなら「何を食べたい」「どこに行きたい」という日常レベルの欲求。
僕たちはそういう、大小さまざまの何層にも重なったダシャー(欲)を抱えながら生きていると言えるかもしれない。
アイビー 確かにそうですね。
アキュバル だから「欲との付き合い方」とは、その中から何を選択していくのか、ということだと思いますね。
アイビー ちなみに、「誰かに勝ちたい」というのは他欲になるんでしょうか。「負けたくない」とか「見返してやりたい」とか。どちらかといえばこうした気持ちは悪に分類されるのかなと思いますが・・・
アキュバル その先のマハー・ダシャー(的な欲求)が何かによるんじゃないかな。「誰かに勝ちたい」ということ自体はマハー・ダシャーではなく、もう少し小さなレベルのダシャーだと思う。
アイビー ああ、なるほど。
アキュバル 勝負の先にその人が何を見ているのか。勝負に勝つことで、社会に貢献したり、大きな価値観を実現したりしたいのかもしれない。でも、「バカにされたくない」といった動機だけでは目先の欲望だということになる。・・・今、(ダシャーのたとえで)かなり意識的にインド占星術に寄せて話してますが(笑)。でも、こういうことを考えるうえでインド占星術はたくさんのヒントを与えてくれますよね。
アイビー うんうん。
アキュバル インド占星術が示しているのは、この世界の構造みたいなものだから。
なぜインド占星術は「美しい」のか
アイビー 私はインド占星術が「美しい」と思いましたね。そもそもインド占星術がすごい、当たるということは知っていました。アキュバル先生に会う前から。でもアキュバル先生のインド占星術の扱い方を見たときに、「美しさ」を引き出して表現されているなと思って。私は美しさとは「バランスが良いこと」だと思っているんです。
アキュバル うん。そうですね。
アイビー これは私が昔絵をやっていたというのが大きいのですが・・・やはり何かが強すぎてもダメなんですね。描いている対象だけではなくて余白や空間が重要な意味を持っている場合もあります。そのバランス感覚というか。
私は古今東西の占いに一応触れてきましたが、インド占星術には「全てがある」と思ったんです。料理でたとえれば完全無欠食で、見た目もかわいい(笑)。土星的に実のあるというか、しっかりとした栄養素を含んでいるのは当たり前として、それでいて金星的な華やかさもある。
だから個人鑑定に関してはインド占星術一本でやっていきたいと思うようになりました。
アキュバル インド占星術が美しいというのは、それが自然の姿そのものだからなのからかもしれないですね。
アイビー それはすごく思いますね。何かを過剰に排除するわけでもなく・・・これは勉強しながら思ったことなんですが、セックスに関して見るポイントが多いなと(笑)。他の占いではそんなにあからさまに言っていないけど、インド占星術は「それも良しでしょう」と(笑)。
もちろん術自体は厳しいですが、私はそういう部分に好感を持ったというか、全ての人の欲望やあり方に対してOKを出してくれているんだなと感じますね。
アキュバル ラオ先生※2も、そういう現実的な相談、たとえばお金儲けに関する質問にも真摯に答えていたらしいですからね。
アイビー あるものはありますからね。それに対してNOと言われないというのは重要だと思います。
アキュバル でも、自然の姿を示しているからこそ残酷だと感じることもありませんか?鑑定を通じて。
アイビー 見ていて苦しそうだなと思うのは、仕事で成功したいのに仕事に関するハウスが良くないとか。でも本人の気持ちは焦っている、自分の向かっている方向とは逆の努力をしているような時ですね。
でもダシャーをさかのぼって過去の出来事を読んでいくというか・・・私はインド占星術は「当てる」のではなく「読んでいく」だけだと思うのですが、依頼者様が「合っています」と術に対する信頼を寄せてくれたところでカルマの説明をさせていただいたとき、ある種の潔い「あきらめ」みたいなものも感じていらっしゃるのがわかるんです。
どうしても現代は他人と比べる社会構造になっていますが、ホロスコープを見ることでそこに他人の欲が入っていることに気付き、「手放す」ためのお手伝いができるのではないかと思っています。
※1 インド占星術において、プレディクション(予言)を行うための最重要テクニック。ダシャーというのはあくまで総称で、ヴィムショッタリ・ダシャーやチャラ・ダシャー、ヨーギニー・ダシャーなど多種多様なダシャーが存在し、その運用法も異なる。
※2 シュリ.K.N.ラオ。インド占星術における世界的権威。官僚時代にインド各地に赴任して現地の占星術家と交流し、「ラオ式」と呼ばれるメソッドを確立させた。1987年からデリーの占星術学校BVB(バーラディーヤ・ヴィッディヤー・バワン)のディレクターを務め、延べ数万人の生徒に占星術の指導を行う。
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