アイビーさんとの師弟対談【とあるインド占星術師が考える欲との付き合い方】Part.1
こちらは先日(2023/4/13)Twitterスペースにて行われたアイビーさんとの対談「師弟対談【欲とは?】とあるインド占星術師が考える欲との付き合い方withアキュバル先生」を元にした記事です。
2021年からアキュバルの元でインド占星術の勉強を始めた占いライター・アイビーさんと、占星術的な観点を交えながら「欲望とは何か?」について語っています。今回はそのパート1。
12ハウスは解脱を目指すための「すごろく」
アイビー 今回のスペースは「師弟対談【欲とは?】とあるインド占星術師が考える欲との付き合い方withアキュバル先生」ということですが、まず何から話していきましょうか?
アキュバル またでっかいテーマを持ってきたね(笑)。欲望とは何か?ということですよね。僕は仏教徒でもないし、修業しているわけでもない。凡夫の中の凡夫ですよ。何が言えるかわかりませんが、とりあえずアイビーさんが先日のイベントで語りたかったという内容を聞きたいですね。
アイビー まず、インド占星術には1から12までのハウスがありますが、11室って深いなと思ったんです。カーマ・トライン※1の3、7、11室が欲望に関するプルシャルタ※2と言われていますが、3室も7室も11室も他人が関わってきますよね。どれも対人間のハウスだから、そもそも欲望はその人の人間関係とシンクロしていると思ったんです。だから人間関係の多寡によって、欲望の量も変化するのではないかと感じていて・・・。それで11室と言うのは一番他欲が混じる場所ではないかと。
アキュバル 多欲?他欲?
アイビー 他欲ですね。自分の欲だけではなく、他の人の期待が乗っかってくるハウスが11室なのかなと思ったんです。スピリチュアルな観点においては、11室から12室への道筋は解脱へと向かううえでの最後の難関とされていますよね。11室は富のハウスでもあるけど、11室が強い人は果たして本当に成功しているのだろうか?と鑑定を通じて感じることがあるんです。
アキュバル そうですね。11室は最強のカーマ・ハウスにして最後の誘惑。そこで道を誤るとまたふりだしに戻るという、ある意味では恐ろしいハウスですよね。12ハウスを「すごろく」だとすると、ゴールのひとつ手前に「ふりだしに戻る」っていうマスがある(笑)。
アイビー (笑)。すごろくの喩えはわかりやすいですね。
アキュバル 解脱がゴールだとしたら、それを目指してサイコロを振って進んでいくわけです。「1マスすすむ」とか「1回やすみ」とか色々なマスがあるんだけど、唯一ふりだしに戻されるのが11室なんじゃないかな。
アイビー 11室はそのあたりが深いなと感じています。
釈迦でさえ「衆生を救いたい」という欲望を持っていた
アキュバル ただこれは僕の理解なのですが・・・まず、プルシャルタ(人生の目的)には4つありますよね。先祖を敬い、儀式を行うダルマ。社会的な地位を築き、義務を果たすアルタ。解脱を目指して修行するモクシャ。カーマは色欲や愛欲。『カーマ・スートラ』※3のカーマですね。で、実は僕はこれ全部「欲望」だと思ってます。
アイビー 4つのプルシャルタが?
アキュバル 先祖を敬いたいという欲望、社会的義務を果たしたいという欲望、解脱したいという欲望。
アイビー そうですね。全部欲望です。
アキュバル 誰しも欲望があるわけで、じゃあその人の欲望はどれなの?というのを見るのがインド占星術におけるプルシャルタだという理解です。それで、アイビーさんがおっしゃったように、カーマはまさに他人が関係してくる欲望ですよね。7室は自分の周りに好きな人間を集めたいという欲求。お付き合いとか。11室は多くの他人に自分を認めてほしいという欲求。
アイビー そう考えると理解が進みますね。
アキュバル また、3室は一般的にコミュニケーションのハウス。他人と密接に関わるハウスだからこそ、またそこで欲望が生まれるわけで。たとえば、他人を屈服させたいとか。3室に火星のような惑星があって激しく傷ついていたりすると、暴力につながるケースもありますよね。その人の表現の仕方として危険なものも出てくる。それは相手を支配したいという気持ちのあらわれです。だから、カーマ・ハウスが他人と関係する欲望であるとアイビーさんがおっしゃったのは、まさにその通りだと思います。
アイビー なるほどー。3室に秘められたある種のキツさ、「他人を屈服させたい」という視点は私にはなかったので、そういうふうに説明されると「確かに!」と思いますね。7室や11室よりも3室のほうが「上下関係」や「主従」という意味合いが強いように思えますし。3室はウパチャヤ・ハウス※4でもありますよね。11室もそうですが。
アキュバル 3室には「目下の人間」、「部下」という意味もありますからね。だから3室は支配欲が出やすいハウスなのかもしれない。目下の人間に対する態度って、その人の本性が出るでしょう。
アイビー 出ますね。
アキュバル じゃあダルマやモクシャが高尚なプルシャルタなのかというと・・・もちろんそれはそうなんだろうけど、やはりそれも人間の欲望という側面はある。釈迦は一切衆生を救おうとして教えを説いた人ですけど、その根底にあるのは「一切衆生を救いたい」という欲望ですよね。だから12ハウスで示されているのはそれぞれの欲のかたちなのかなと。
アイビー なるほど・・・ああ、やはり師弟関係ということもあって、どうしても今回は聞き役にまわってしまう(笑)
アキュバル あ、でもこれはインド占星術師というより個人的な見解ですよ(笑)。古来、インド占星術はヴェーダ(聖典)の一部として、スピリチュアルな修行の一環とされてきましたが・・・個人的にはインド占星術をやったからといってスピリチュアルになるとは思っていなくて。
アイビー そうですよね。
アキュバル ですよね。インド占星術を始めてからこいつ変わったなぁ!という経験はまだない(笑)
アイビー むしろインド占星術の鑑定や勉強を通じて、「その人らしく」なっていくような気がします。インド占星術で自分のチャ―トを見たり鑑定を受けたりすることで、私はこのカルマを繰り返しやすいんだなと自覚できる。それに対して「なんとかしなきゃ」と思っていた今までの自分がいなくなって、効率が良くなる瞬間がありますね。
インド占星術の大前提は「今生起こることは全て過去世のカルマの結果である」ということですよね。生年月日と出生時刻から算出したチャートに書かれていることは変わらないという事実を突きつけられた時に、逆に切り捨てられる努力、ムダな努力がわかるようになると思います。
私もインド占星術に関わるようになって、救われたと思う部分がかなりありますね。だから逆に自分の中も欲望も(なくなるのではなく)際立っていくように思えます。
アキュバル ホロスコープはそれを見るための手段ということですね。
※1 愛欲のプルシャルタを示す3つのカーマ・ハウス(3,7,11室)の総称。同様にダルマ・トライン、アルタ・トライン、モクシャ・トラインがある。
※2 ヴェーダで説かれる人生の4つの目的のこと。Dharma(ダルマ)、 Artha(アルタ)、Kama(カーマ)、Moksha(モクシャ)の4つを指す。
※3 有名な古代インドの性愛論書。4世紀から5世紀にかけて成立したとされる。
※4 ハウスの分類のひとつ。3,6,10,11室が相当する。最初は悪いが、努力により改善していくハウスとされる。
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