【インド占星術のキホン】惑星の「ディスポジター」とは?
今回は、プライベートレッスンの生徒さんのある質問がキッカケでこの記事を書いています。
ホロスコープにおいて、それぞれの惑星が示している象意、テーマごとの吉凶を見ようとすると、実に多くの視点が必要になります。
たとえば太陽を見るのであれば、品位(強さ)はどうなのか?在住しているハウスはどこなのか?どんな惑星からアスペクトを受けているのか?等々・・・。
その中のひとつが、「ディスポジターを見る」ということです。
ディスポジターとは?
多少なりとも占いの知識をお持ちの方、ご自分で勉強されたことのある方は聞き覚えがあると思いますが、一般の方にはほとんど馴染みのない言葉でしょう。
これは「ディスポジター(Dispositer)」という単語自体がおそらく占星術界における造語だからで、性質・傾向という意味のDispositionから派生したものだと思われます。
では、インド占星術においてはどういう場合に「ディスポジター」という言葉を使うのでしょうか?実例を見てみましょう。
「ホロスコープに刻まれた「成功の証」【ラージャ・ヨーガ】」で取り上げた映画監督ウディ・アレンさんのホロスコープです。
水星に注目してください。
このような場合、「水星は金星のディスポジターである」という言い方をします。
金星は乙女座に在住している。乙女座は水星が支配している。だから水星は金星のディスポジターである、という論法です。
簡単にいえばディスポジターとは、「その惑星が在住している星座(ハウス)の支配星」ということですね。星座(ハウス)が文字通り惑星の住む家だとすれば、ディスポジターは家主さんのようなもの・・・といえばわかりやすいでしょうか。
つまりウディ・アレンの場合、3室(芸能)と10室(仕事)を支配する金星(芸術)は、ディスポジターである水星(知性・ユーモア)の影響下にあるということです。
ディスポジターが分析において重要になるケース
とはいえ、ディスポジターまで考慮に入れてホロスコープを読んでいく・・・というのは中級者以上の領域で、優先度も個人的にはそこまで高くありません。
むしろ、初心者の段階でディスポジターまで視野に入れて惑星の分析を行っても、逆に手がかりが多すぎて混乱してしまうでしょう。
しかし、「こういう場合はちゃんとディスポジターまで見たほうがいいよ」というケースがあって、それがラーフとケートゥの分析です。
清水俊介先生が「Astro Diary」で紹介しているラオ先生の書籍の一節からの引用です。
もし、ラーフが単独で、他のどの惑星からもアスペクトされていなければ、ラーフがもたらす結果は、ラーフが在住するハウスの状態とそのディスポジターの状態に左右されます。
ーfrom Karma and Rebirth in Hindu Astrology, by K.N. Rao
ここではラーフに限定していますが、ケートゥも同様に考えます。
こういう条件下であれば、ディスポジターは惑星の性質を読み解くうえで非常に重要な存在になります。
再びウディ・アレンのホロスコープ。ケートゥに注目してください。
ケートゥはどの惑星からもアスペクトされておらず、上記の条件を満たしています。
ケートゥは双子座に在住している。双子座は水星が支配している。→支配星座の詳細についてはこちら
よってケートゥのディスポジターは水星です。
水星はケンドラハウス※である4室に在住して、5室を支配する木星および1室を支配する太陽とコンジャンクトし、7室を支配する土星のアスペクトを受けています。
未読の方はぜひ「ホロスコープに刻まれた「成功の証」【ラージャ・ヨーガ】」をご一読いただければと思いますが、ウディ・アレンが3度目のアカデミー賞脚本賞を受賞したのが2011年のケートゥ期。興行収入としても『Midnight in Paris(ミッドナイト・イン・パリ)』は自身の作品の中で歴代1位を記録しました。
先の記事の中では「ケートゥは11室(受賞)に在住しているから」とさらっと説明しましたが、実はディスポジターである水星の影響を抜きにしては語れないでしょう。
水星は土星・太陽・木星の形成する強力なラージャ・ヨーガに絡んでいます。
ホロスコープを読み解く上での「隠し味」的な存在であるディスポジターですが、よければこれを機に覚えておいてください。
※ ホロスコープの要となるハウス。1,4,7,10室を指す。別名「ヴィシュヌ・スターナ」。
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