俺はまだ本気を出してないだけ?象意反転の【ニーチャバンガ・ラージャ・ヨーガ】
今回はヨーガの紹介なのですが、「【永久保存版】惑星の品位一覧」の続きと言えるかもしれません。
この記事では惑星の品位について解説し、では、「惑星が強い=○、弱い=×」という単純な読み取り方でいいのか?と問いかけたところで終わっていました。今回はもうちょっとこの問題について考えてみたいと思います。
惑星の強さとは?
ざっくり言えば、強い惑星が健康をもたらすことは間違いなさそうです。
しかしそれ以外の要素、たとえば成功運や才能などに関しては、必ずしも「惑星が強い=○」という方程式が成り立つとは限らない、というのが僕の印象です。
もちろん、強い惑星がポジティブな象意(例えば金星なら異性運)を引き出しやすいのは確かだし、やっぱり弱い惑星が多い人はどちらかといえば逆境に立たされがちな傾向にはあると思います。
しかし、惑星の弱さとは、ある種のユニークさのようなもの。僕はそう置き換えて考えています。
たとえば人前では緊張して流暢に話せない性格でも、それを「小心」と捉える人もいるし、「誠実さ」と捉える人もいる。
短絡的に惑星の短所を「悪い」と結論づけるのは間違っているということですね。
ただ、やはり健康面においては減衰はウィークポイントにはなるかもしれません。
では、具体的に惑星が「減衰」している人のホロスコープを見てみましょう。
「星座と【五大元素】のヒミツ」でご紹介したアル・パチーノさんにふたたび登場していただきます。
ホロスコープを見ると、なんと月、水星、土星の3つの惑星が減衰しています。さらに月はラグナ・ロード※3なのでその影響は大きいでしょう。
しかし言うまでもなく、アル・パチーノさんはオスカー受賞など、輝かしい経歴を持つ名優です。ひとまず、減衰惑星は社会における成功を阻むものではない。
もちろん太陽は高揚し、金星は定座なので、紛れもなく「強い」部分は確かにあるわけなのですが・・・。
また、アル・パチーノの月、水星、土星はニーチャバンガ・ラージャヨーガという特殊なコンビネーションを形成しており、社会的成功を強く暗示しています。
Neecha bhanga raja yoga
【定義】
減衰する惑星が以下の条件を満たす。
【意味】
減衰がバンガ(キャンセル)され、成功と繁栄をもたらす。
1. 減衰惑星が在住する星座の支配星がラグナまたは月からみてケンドラ※1にある 2. 減衰惑星が高揚する星座の支配星がラグナまたは月からみてケンドラにある 3. 減衰惑星が、その惑星が在住している星座の支配星とコンジャンクトしているか、アスペクトされている 4. 減衰惑星が、その惑星が高揚する星座の支配星とコンジャンクトしているか、アスペクトされている 5. 減衰惑星が、その惑星が在住している星座の支配星と星座交換している 6. 2つの減衰惑星同士が、アスペクトしあっている
(以上の条件はKSチャラク氏の著書による)
バンガの条件を満たせば、減衰する惑星はラージャ・ヨーガ※2を形成し、社会的成功をもたらします。
アル・パチーノの月は2と4、水星は1、土星は1と2を満たしていることがわかりますね。
ニーチャバンガ=「義手」のようなもの?
『鋼の錬金術師』(荒川弘)より
しかしながら、ニーチャバンガ・ラージャヨーガは「鉄を貴金属に変えるような」奇跡を起こすもの(錬金術)ではありません。ある先生はこのヨーガのことを「義手(足)のようなもの」と表現します。
つまり、訓練によって人並み以上にはなれるものの、五体満足の人のような自在さを得るわけではない。「減衰」の弱さはどうしても残るというわけですね。
また、ニーチャバンガ・ラージャヨーガは「成功するまでに多くの辛苦や努力が必要である」ことを示唆します。
シチリア移民の子として生まれたアル・パチーノは両親が2歳で離婚し、非常に貧しい少年時代を送ったことはよく知られています。清掃員や配達人などのアルバイトを転々とし、26歳で演劇活動を始めてからも、オーディションに行くためのバス代すらないほど貧しい時もあったようです。
このあたり、28歳にしてすでにハリウッドの頂点に立っていたジェニファー・ローレンスとは対照的ですね(ジェニファーには減衰惑星はひとつもない)。
それではダシャーを見てみましょう。
ケートゥ期
貧しい少年時代。
ケートゥは減衰する水星とコンジャクトしている。
金星期
ニューヨーク市内で自転車便やビルの清掃稼業、映画館のアルバイトなど様々な職業を渡り歩く。26歳でアクターズギムナジウムに通い、演劇活動をはじめるが、経済的には好転せず。
金星は定座だが、D9で減衰している。
太陽期
1969年2月、第23回トニー賞受賞(太陽期になった直後!)。1972年『ゴッドファーザー』出演。1972年から1975年まで4回連続でアカデミー賞ノミネート。
太陽は10室で高揚しているが、D9では減衰する火星とコンジャクトしている。
月期
1983年、代表作のひとつ『スカーフェイス』主演。
月は減衰している。
火星期
1992年の『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』がアカデミー賞にノミネートされ、アカデミー主演男優賞を受賞。
火星は定座の金星とコンジャクトし、減衰する月にアスペクトされている。
このように、アル・パチーノのダシャーは必ず減衰惑星と絡んでいることが最大の特徴です。確かにニーチャバンガ・ラージャヨーガは定義通りの成功をもたらしたわけですが、ジェニファー・ローレンスのような、絵に描いたような出世街道ではないあたりに、何とも言えない哀愁のようなものを感じますね。
My first language was shy. It’s only by having been thrust into the limelight that I have learned to cope with my shyness.(私は生まれつきのシャイだ。シャイに対処するため学んだことは脚光を浴びるよう飛び込んでいったこと、それだけさ。)
これはアル・パチーノご本人の発言。こういう、「短所即長所」というか、自分の中のコンプレックスに向き合い、成功したアル・パチーノの人生は、確かにニーチャバンガらしいなぁと思いますね。
あなたの減衰惑星は「まだ本気を出してない」だけ?
ぜひ、ご自分のホロスコープでニーチャバンガ・ラージャヨーガ、チェックしてみてください。
※1 ラグナから数えて1,4,7,10番目の星座のこと。ケンドラ・ハウスは「ヴィシュヌ・スターナ」とも呼ばれ、ホロスコープ全体のクオリティを左右する。
※2 ラージャ・ヨーガ・・・原則的にはケンドラハウス(1.4.7.10)の支配星とトリコーナハウス(1.5.9)の支配星同士のコンビネーションを指す。出世・昇進を意味するヨーガ。
※3 ラグナの星座を支配する惑星のこと。全惑星の中で最も重要な役割を果たす。