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アイビーさんとの師弟対談【とあるインド占星術師が考える欲との付き合い方】Part.3



Twitterスペースにて行われたアイビーさんとの対談「師弟対談【欲とは?】とあるインド占星術師が考える欲との付き合い方withアキュバル先生」文字起こしのパート3です。



雀鬼・桜井章一さんに見る「自然観」


アキュバル ホロスコープとダシャーがその人の希望に合致していないことはある。でも、基本的にダシャーが示しているのは「変化」なんですよね。その人が今持っている望みは、実は「過去そうだったから」というだけに過ぎないのかもしれない。


アイビー 今まで自分はこのパターンだったけど、今は違うということに気付けないのはもったいないですよね。


アキュバル そういう意味では、人は「他人の欲望」を生きてしまうこともあるし、「過去の自分の欲望」を生きてしまうこともある。


アイビー ああ、それはすごく思いますね。私のマハー・ダシャーは2019年8月から土星期なんですが、しばらくは木星期の自分を少し引きずっていました※1。でも最近ようやく土星期が板についてきた感じがします(笑)。

私が山に引っ越してきたのが2021年の春なんですが、それまでは都会寄りの生活をしていたんです。なんだかんだで山の暮らしに慣れるまでは2年くらいかかりましたね。


アキュバル ダシャー・チッドラ※2を経て、自然に新しい生活に馴染んでいったんでしょうね。ダシャーが示すのは変化・・・ということで、ここでスペースの前にアイビーさんが振ってきた雀鬼・桜井章一※3さんの話をしたいんですが(笑)。


アイビー してくれますか(笑)。最近、桜井章一さんの本をひょんなことから読んだんですが、そこにアキュバル先生からも聞いたことが書いてあったんです。まだ1冊しか読めていませんが・・・桜井さんは自然が大好きですよね。


アキュバル そうだね。


アイビー 桜井さんは自然の流れを読むというか、「わかる」とおっしゃっていて。その本の中に、土砂降りの雨の中、急いで雨の中を駆け出していく人たちについて書かれていたんですが、まさに過去の私だと(笑)。


アキュバル 過去の私?(笑)


アイビー じきに止むんだから、それまで体力を温存して待てばいいのにって。「確かに!」と思って感動しました。あと、桜井さんが設立した雀荘の名前がありますよね。


アキュバル 「牌の音」ですね。


アイビー はい。その由来も書いてあったのですが、「世の中の音が汚い」と。世の中もそうだし、雀荘でも牌を乱暴に扱う人間が多すぎる。良い音がしていない。だから自分の雀荘の名前は「牌の音」にしたと書かれていて、「格好いい!」と思いました。


アキュバル 桜井さんは骨の髄まで自然観が染み込んだ、まさに自然の化身のような人ですよね。人としてここまでのレベルに到達できるのかという稀人(まれびと)。

桜井さんの中心には「自然」という揺るぎない軸がある。それは、自然とは変化するものであり、作為を持たないということです。ダシャーにも示されているように、この世界には「変化」というものが前提にあり、僕たちはそれに対応していかなくてはならない。


アイビー はい。


アキュバル 変化に対応するには考えていたらダメで、葉っぱが風に揉まれて落ちるように、瞬間瞬間、ちょうど良い対応を自分の中で問いかけていくしかないということですよね。だから麻雀で牌を選んで捨てる時も、1秒以内に打つ。


アイビー 道場生にも考えさせずに、すぐに打たせているみたいですね。


アキュバル 考えると目先の欲が出てきますからね。ああしてやろう、こうしてやろうと。そうじゃなく、「もっと大きなものに委ねろよ」ってことですね。


アイビー 自然への全幅の信頼のようなものが必要ですね。



村田諒太、無敗の男 雀鬼桜井章一から学ぶ【勝負論】(「村田諒太channel VILLAGE FIELD」)より



アキュバル アイビーさんが雀鬼の話をしたいということで、実は桜井さんの動画をいくつか見たんです。その中にボクシングの村田諒太さん※4との対談があったんですが、ちょうど二人が欲の話をしていて・・・。


アイビー へえ!


アキュバル 雀鬼が言うには、「(欲は)ある程度なら作用がある。ある程度はあってもいいが、過ぎてもいけない」と。だから、置いておきなさいということだよね。

それに対して村田さんが「三大欲は人間が原始的に持っているものですが、名誉欲や成功欲などは自然界にはない。これは社会が作り出した欲求で、僕には不自然に映ります」と言っていて、雀鬼も「その通り」と大きく頷いていたんです。

僕は村田さんの試合は見たことありませんが、これを見てすごい人だと思いましたね。チャンピオンになるだけのことはある。


アイビー そうですね。



自分から最も遠いものこそが、自分を駆り立てる

アキュバル でも、人間だけが持っている不自然な欲求の中にも、大事なものはあると思います。アイビーさんは何だと思いますか?人間だけが持っている一番大きな欲求。


アイビー 生きたいということですか?


アキュバル 生物全般ではなく、人間だけが持っているものです。


アイビー 自分を大事にしたいということ?


アキュバル 自分の中の何を大事にしているんですか?


アイビー 思想?


アキュバル そうだと思う。つまり「価値観」じゃないでしょうか。


アイビー 先日、あるスペースで「欲」についてお話したときも、私たちには「ヴィジョン」の欲求があるよねという話になりました。ヴィジョンというのはその中に含まれますか?


アキュバル どうだろう。価値観については、昔からいろいろな言葉で言い表されてきましたよね。キリスト教の「愛」や中国思想における「仁」や「義」。西洋における「正義」や「公正」。「美」もそうかもしれない。自分では意識していなくても、そうした抽象的な価値観を表現したいという欲求は誰もが持っているんじゃないでしょうか。


アイビー あると思います。人によって濃い、薄いという濃淡はありそうですが。


アキュバル もともと薄いというより、そういう人はプラティアンタル・ダシャー※5的な、目の前の欲求に夢中になっているだけかもしれませんね。なぜなら、そういう価値観に関する欲求は自分の生活とは遠いところにあるから。でも実は、自分とは一番遠くて大きいものが、自分を強烈に突き動かしていたりする。

これは例えば、トランジット※6でもそうです。インド占星術のトランジットにおいて、最も大きな影響力を持つのは土星ですよね。土星はナヴァ・グラハ※7の中では地球から一番遠くて遅い惑星。でも、自分とは一番遠く隔たれた存在こそが、実は自分の命運を左右しているということです。




※1 ヴィムショッタリ・ダシャーという予測法では、惑星が決まった年数と順番で切り替わり、運気が推移していく。土星期の前のダシャーは木星期。

※2 一番大きな運気の区分であるマハー・ダシャーが次の惑星に切り替わる、ちょうど境目の時期のこと。一般的には環境が大きく変化し、不安定になる時期とされる。

※3 かつて裏世界の麻雀でヤクザや社長の代打ちとして麻雀を打ち、「20年間無敗」を貫いた伝説の雀士。現在は東京・下北沢で「牌の音」という雀荘を経営している。通称は「雀鬼」。

※4 奈良県出身のプロボクサー。ロンドンオリンピックミドル級金メダリスト、元WBA世界ミドル級スーパー王者。日本人として初めてオリンピック金メダルとプロ世界チャンピオンの両方を獲得するという偉業を成し遂げた。

※5 マハー・ダシャー、アンタル・ダシャーに続くレベル3のダシャー区分。より具体的な傾向を示し、上のレベルのダシャーよりもさらに細かくイベントの時期を推測できる。

※6 リアルタイムの惑星の運行を個人のホロスコープと照らし合わせ、発生するイベントを予測する方法。

※7 インド占星術で使用する9つの惑星(太陽・月・水星・金星・火星・木星・土星・ラーフ・ケートゥ)の総称。

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