【基礎知識】ホロスコープにおける日食・月食(部分・皆既)
(古代オリエント博物館 特別展「ヒンドゥーの神々の物語」より。太陽とラーフ)
Salam!
数日後の2022年11月8日、皆既月食が日本から観測できるということで話題になっています。
また、月食の最中には、月が天王星を隠す「天王星食」が起こるということで巷で盛り上がっていますが、インド占星術では天王星は使わないのであまり関係がありません(^^; しかし、この日食・月食という天体現象はインド占星術において重要な意味を持っています。
それは主にマンデーンと呼ばれる政治分野の占星術、そしてムフルタと呼ばれる吉日選定といった分野においてなのですが、今回はそこまで立ち入らず、「日食・月食」の基礎知識について解説してみたいと思います。
まず、日食・月食がなぜ起こるのか?については、インドにおいてはラーフ・ケートゥの神話に起源を持つことを以前解説しました。
これは神話上の説明ですが、今度は天文学的な観点から見てみたいと思います。
蝕の仕組みとホロスコープ
前提となる知識の部分ですが、ホロスコープ上で太陽と月が重なっていても「蝕」にならないのは太陽と月の軌道がずれているからです。
図の通り、太陽の通り道である「黄道」と月の軌道である「白道」は天球(地球中心で見た場合の架空の天体モデル)上でずれていることがわかります。
この「黄道」と「白道」が交差するポイントがラーフ(昇交点)とケートゥ(降交点)。
つまり、「蝕」が起きるのは満月か新月がラーフかケートゥと近づく瞬間、ということになります。
では、11月8日の皆既月食の瞬間のホロスコープを見てみましょう。
国立天文台によれば、蝕の最大になるのは19:59。ということで、この時刻でホロスコープを作成しています。
太陽と月が同じ度数(21:50)で、正反対の星座に位置しています。なので、完全な満月。
これにラーフとケートゥが非常に近い度数でコンジャクト(同室)していることがわかります。
ラーフ・ケートゥと太陽・月の度数が近ければ近いほど皆既に近くなり、遠ければ部分食、ということになります。
この11月8日の食では度数が非常に近いため、日本でも観測できる皆既月食です。
このように満月の場合は「月食」です。
月食は地球から見て太陽と月が正反対に位置するために、月が地球の影に隠れてしまう現象です。
なので、ホロスコープという形式で表現するとちょうど太陽と月が対角線に位置し、そこにラーフ・ケートゥが重なるというわけです。
では日食のホロスコープはどうなるのかというと、こんな感じ。
今年の5月1日、日食時のホロスコープです。
太陽と月がぴったりの度数でコンジャクト。新月の状態ですが、ここにラーフが重なっています。
日食とは、太陽と地球の間に月が入って隠してしまう現象のこと。先ほどとは違い、地球から見て太陽と月が同じ方向に位置していることがわかります。
太陽・月とラーフの度数差に注目してください。
11月8日より遠いですよね。つまり、これは皆既ではなく部分日食ということになります。
では最大でどのくらいの度数差までが「蝕」の範囲内かというと、国立天文台によれば太陽・月と軌道の交点の度数差が「17°以内」ということです。
ということで、今回は日食・月食についてその成り立ちを解説しました。
さて、余談ですが11月8日の19時59分を「新月の瞬間」と考えた場合、実はこのホロスコープは向こう二週間(次の満月まで)の動向をあらわすホロスコープとなります。これを「新月図」と言います。
次回はそのあたりも踏まえ、新月・満月といった天体現象とマンデーン占星術の関わりについて解説してみたいと思います!
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